夏と僕とウイスキー
暑い。
東京に来て初めての夏だけれど、湿度と人口密度と日差しでとんでもなく暑い。
とは言っても、大阪にいた時もこんなものだったような気はしなくはない。
湿度だけは、今の家の方が高いと断言できるけれど。
そんな暑い日々。
仕事終わりに、家で飲むものといえばまずビール。
キンキンに冷やして、風呂上がりに喉を鳴らして飲むのは爽快だ。
おつまみは、日によって変わる。
料理が趣味だと公言してるけれど、毎日の献立を考えるのはなかなかに手間で、世の中の主婦の方々は凄いなぁと思う。
今日のおつまみはまぁシケたもので
缶詰の焼き鳥を加えた焼きそばとスパムを焼いただけの簡単手抜きの二品
ビールを飲むだけだからこんなものでいいのだ
ビールといってもイオンのPB……トップバリュのやっすい発泡酒。
美味くはない。
美味くはないが、こんなもんでいいのだ。
雑なおつまみにやっすい酒。
男の、社会人一年目の、貧乏一人暮らしならこんなものだ。
焼きたての焼きそばを啜り、ビールをぐびぐび。
カリカリに仕上げたスパムを摘み、ビールをゴクゴク。
あっつい夏の仕事終わり。
風呂上がりと調理後の火照った身体に、これが丁度いい。
そしてビールを飲み終えて、焼きそばとスパムを食べ終えたら、前菜は終わり。
これからが本番で、ここからが僕の贅沢なのだ。
さて、タイトルにある通り、僕はウイスキーを飲もうと思っている。
今私の部屋にあるウイスキーは三種類。
ジョニ黒に、響JH、ボウモア12年。
どれを飲むか、というのはいつも悩む。
どれを飲んだって美味しく飲めるけれど、だからこそどれを選ぶかは大事だと思っている。
その日の気分をしっかり見極めて選ばなければ、美味しく飲めても物足りないのだ。
今日の一杯は、ジョニ黒に決めた。
ロックにして、氷が溶けるに連れ移り変わる風味を、旅のごとく味わおうと思う。
ジョニ黒。
ブレンデッドの、スコッチウィスキー。
まだまだ飲んだ酒は少ない僕だけど、ジョニ黒の完成度を超える酒はそうないと思っている。
僕がウイスキー好きになったきっかけの一本で、家飲みでは一番愛飲してる一本だ。(バーに行けば、ゴールドラベルばかりだけれど)
ジョニ黒がどんなウイスキーかは、まぁ置いとこう。
今日はそんなことを語る気分でもない。
ウイスキーを飲む時のおつまみってのは、いつも悩む。
チーズにナッツ、ドライフルーツにジャーキー。
選択肢は幅広い。
どこのウイスキーか、どんなウイスキーかでおつまみを変えるというのが通ってものだけど、貧乏酒飲みの僕にゃそんな真似はできないわけで。
世の中には「ウイスキーにつまみなんていらねぇよ!」なんて剛毅な方もいらっしゃるけれど、そこまでお酒に強いといえない僕には厳しいわけで。
じゃ、何をつまもうか、と部屋を漁ってると出て来たのはこんなもの。
ビッグカツと、チータラ。
ビッグカツってウイスキーに合うのか?とは思わなくもない。
チータラは合うだろ、チーズだし。
ともあれ、ビッグカツを一口かじる。
安っぽいソースとカレー粉の風味。
昔懐かしい駄菓子の、変わらない味。
実家近くの駄菓子屋は潰れてしまったけど、小さい頃に通った思い出が蘇って。
その思い出は口に含んだウイスキーの甘く優しい香りに流されて。
否が応でも、大人になったんだと思わせられる。
公園で友達とふざけまわって、うまい棒をかじってチェリオを飲んだあの日々はもう帰ってこないんだなぁ……。